TOPPANデジタル株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:坂井 和則、以下 TOPPANデジタル)は、情報処理学会シンポジウム「INTERACTION2025」(2025年3月2日から3月4日開催)において、インタラクティブ発表「画像生成AIによる即興プロジェクションマッピングの提案」で「インタラクティブ発表賞(PC推薦)」を受賞しました。
<INTERACTION2025>
https://www.interaction-ipsj.org/2025/award/
「INTERACTION2025」は、人と人工物,および人工物を介した人と人のインタラクションに関する研究のシンポジウムで、今年で29回目を迎えます。ユーザインタフェース、入出力デバイス、仮想/拡張現実、ユビキタスコンピューティング、ソフトウェア工学といった計算機科学、さらには認知科学、社会科学、文化人類学、メディア論、芸術といった人文科学の研究者および実務者が一堂に会し,インタラクションに関わる最新の技術や情報を交換し議論します。
今回、TOPPANデジタルは、「画像生成AIによる即興プロジェクションマッピングの提案」についてデモ発表を行いました。一般的に、プロジェクションマッピングでは、事前のコンテンツの作り込みが必要であったり、プロジェクタと投影面の位置合わせ等の設置作業が複雑であったりと、導入の負荷が高いものでした。これに対して、提案手法では、画像生成AIを用いて、現在の投影面の状態に合わせたコンテンツをその場で生成することで、事前のコンテンツ制作や複雑な設置作業が不要なプロジェクションマッピングを実現しました。本発表は、その新規性、および研究分野の発展への寄与を評価され、インタラクティブ発表賞(PC推薦)を受賞しました。
※インタラクティブ発表賞(PC推薦):投稿された全論文が「新規性」「有用性」「信頼性」「対話喚起性」の軸でスコアリングされ、上位評価がプレミア採択として採択されます。プレミア採択された論文の中から、発表当日のチーフプログラム委員団の巡回審査を経て、インタラクティブ発表賞が決定されます。2025年は、275件のインタラクティブ発表への投稿に対し、11件の発表がインタラクティブ発表賞(PC推薦)を受賞しました。
■開発の背景
TOPPANグループは創業以来、「情報を正しく記録し正しく伝える」という印刷テクノロジーを礎に、その培ってきたノウハウを高品質映像やVRといった先端表現技術へと応用し、映像制作分野においても一定の評価を得ています。さらに、これまでの経験と実績を背景に、映像表現技術の更なる発展を目指して研究開発を進め、従来の方法にとらわれない新しい可能性の追求に挑戦してまいりました。その一環として、インタラクティブな映像体験を実現するための技術として、事前のコンテンツ制作や複雑な設置作業を不要とするプロジェクションマッピング技術を開発しました。
■発表の概要
プロジェクションマッピングは、物体や空間に映像を投影し、その形状や特徴に合わせて映像を変形させることで、リアルな立体感や動きを表現する技術です。建物の外壁や舞台セットなど、さまざまな対象物をスクリーンとして活用することで、魅力的で存在感のある映像提示・映像表現が可能となります。一方で、従来のプロジェクションマッピングでは、事前のコンテンツ制作や設置作業の負荷が高いといった課題があります。これに対して、本発表では、画像生成AIによる即興プロジェクションマッピングを提案しました。提案手法では、画像生成AIを用いて、投影対象の形状に合わせて、その場で投影コンテンツを制作するため、事前のコンテンツ制作が不要です。さらに、生成される投影画像は、投影対象の形状に位置合わせされた状態で投影されます。
今回、デモ発表では、白色の車の模型に対して、その場で車の模様・色を生成して投影しました。どのような模様にするかをテキストで指示することで、インタラクティブにコンテンツを変化させることができます。また、模型やプロジェクタを動かすと投影している模様と投影面がずれてしまいますが、再度生成し直すことで、移動後の状態に位置合わせされた画像に修正されます。さらに、本発表では、粘土を用いた造形に対するプロジェクションマッピングを実演しました。粘土のようにその場で造形を行う対象物では、事前にコンテンツを用意することができませんが、提案手法は事前のコンテンツ制作が不要なため、自由な形状の投影面にも対応可能です。このように、本技術は、投影対象物の位置や形状を体験者が操作することでコンテンツが変化し、プロジェクションマッピングによる新しいインタラクション体験を提供することが可能です。

今後は、精度や速度の向上に加えて、画像生成AIと動画生成AIを組み合わせて、動画コンテンツの生成に対応させ、本技術による表現の拡張を検討します。
また、本技術の展開先として、デザイン検討の場での活用や、ミュージアムなどにおける体験型コンテンツでの活用を検討します。
※本提案手法は、TOPPANホールディングス株式会社が関連特許出願中です。