研究分野 量子

量子コンピュータは今までとは桁違いの計算能力を持ち、破壊的イノベーションを起こすとされ各国が国家戦略として開発・活用を進めています。
活用方法としては、最適な組合せや順序を短時間で計算することによる業務の効率化、材料特性や化学反応の高速・高精度な計算による革新的材料の生成などが注目されています。
その反面、高い計算力が故、インターネット通信などに用いられている暗号アルゴリズムが解読される恐れがあり、量子コンピュータでも解読できない暗号技術(PQC:耐量子計算機暗号)や通信技術(QKD:量子鍵配送)などの早期な実装・導入が課題とされています。
当社では、PQCの社会実装に向け、研究機関・企業などと連携し技術検証を推し進めています。また、物流業務やBPO業務の効率化に量子計算を活用した取り組みを行っています。
活用イメージ
化学や創薬、製造などのものづくりの分野で、量子力学の原理に基づいて原子や分子の性質を予測することで、実際に実験することなく効率的に革新的な材料や薬を作り出します。
また、二酸化炭素をエネルギーに変換する光合成のメカニズムや、枯渇が懸念される肥料の生産につながる生物の窒素固定の仕組みなどの未解明な自然現象を量子化学計算を使い明らかにし、食料・環境問題など地球規模の課題を解決することが期待されます。

量子コンピュータ時代において、今までと同等の利便性で暗号化データ通信、暗号化データ活用を耐量子計算機暗号(PQC : Post-quantum cryptography)を用いて安全に行うことができます。
これにより、電子カルテや医療用画像、ゲノム情報などの秘匿性の高い医療情報を安全にオンラインで共有することができるため、オンライン診療や横断的な医療データの活用による医療の高度化・合理化が実現できるかもしれません。
また、製造分野であれば営業情報や生産情報などをリアルタイムで集中管理・分析することで、遠距離の生産拠点へ赴くことなく効率的に企業活動が行えます。

研究紹介
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ビッグデータをビジネス活用に繋げる「数理最適化」技術とは?
数理最適化は、制約を満たしつつ最適な解を求める計算技術で、物流、金融、製造など幅広い分野で活用されています。近年、量子コンピュータやイジングマシンの応用が進み、より複雑な課題への対応が期待されています。TOPPANデジタルでは、数理最適化技術と量子コンピューティング技術の組み合わせに関する様々な取り組みを行い新たな価値創出に取り組んでいます。
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量子人工知能の利活用と方向性
量子AIは量子状態によるデータの表現や量子回路を用いて行うAIです。より少量のデータを用いた学習や学習時間の短縮、精度の更なる向上といった性能の改善や、実行環境における運用コストの削減など、性能や運用の指標で量子優位性が期待されています。TOPPANは量子AIに関する基礎研究や事例開拓などを実施しています。
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研究開発をアシストする量子化学計算
量子化学計算とは、原子や分子の性質を量子力学の原理に基づいた計算から予測する技術です。量子化学計算は、有望な化合物の構造や物質の反応経路を、実験をすることなく解明できる手段として、化学や創薬、製造などのものづくりの分野で、より良い材料を・より効率良く開発するために活用することが期待されています。
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量子コンピューティング技術の可能性
量子コンピュータは量子力学のふるまいである「量子重ね合わせ」「量子もつれ」を応用して演算処理を行うコンピュータです。指数関数的に増加する計算処理を高速に計算できる点で期待されております。TOPPANでは量子アニーリングを活用した物流業務の効率化やプラスチック資源回収への取り組みなどを行っています。
主要論文・受賞歴
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2025/04/15 発表
「第5回量子コンピューティング EXPO【春】」に出展し、耐量子セキュリティ技術の取り組みや量子計算に関する研究成果を紹介
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2025/03/15 発表
大阪大学と共同で、量子コンピューティングと古典コンピューティングをこれまでよりも高度にハイブリッドさせた方法として、QSCI-AFQMCというアルゴリズムを開発し論文を発表
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2024/09/21 発表
第18回分子科学討論会にて「Seniority zero spaceを試行波動関数とする補助場量子モンテカルロ法の開発」を発表